メメント・モリは諸刃の剣・・・

心理学には「脅威管理理論」がある

 

すべての人間は無意識に

死への不安を感じていて

あなたの選ぶ行動の多くは

その恐怖を解消するために行われるという説

 

良かれ悪かれ

人は死の不安によって突き動かされている

 

ブレーズ・パスカルが17世紀に残した

「人間は死、悲惨、無知を癒すことができなかったので

  自己を幸福にするためにそれらを敢えて考えないように工夫した」

という言葉はまさに脅威管理理論を先取りするもの

 

というと

「無意識の恐怖など検証できるのか?」といった

疑問が湧くかもしれない

 

本人にすら認識できない恐怖感を

どうすれば研究者は外部から観察できるのだろうか?

 

この難問に対して

心理学の世界ではサブリミナル刺激を使う

 

たとえば

2008年にスキッドモア大学が行った実験では

学生に対して「死」「花」「スニーカー」などの単語を

3ミリ秒だけ無意識下に刷り込ませた

 

すべては人間の目では確認できないスピードであり

気づいた人は誰もいない

 

ところが

その後で学生たちにアメリカの政治システムに関する

エッセイを読ませたところ

大きな違いが見られた

 

「死」のサブリミナルを刷り込まれた被験者は

「反米」よりも「親米」な内容のエッセイに良い点数をつけた

 

無意識に起きた死の不安が

己の世界観を維持したい心理を刺激し

アメリカ」という大きなフィクションを守る方向に

意識が働いたのだろう

 

「脅威管理理論」のエキスパートである

シェルドン・ソロモン博士は

こう言っている

 

「私たちはみな不安を抱えている

  自分自身への死への恐怖を

  どうにかやり過ごしていかねばならないのだ」

 

要するに

「死を想え」というアドバイス

あなたの考え方によって

結果が変わる諸刃の剣

 

ジョブズ氏や聖書が意図したような

メメント・モリ(死を想え)のメリットを引き出すには

たんに自分の死について考えるだけでは

切っ先を見誤る可能性がある

 

著書の引用はここまで

 

より俯瞰して捉えてみよう

 

メメント・モリ

人によっては力となり得るし

人によっては歪みにもなり得る

 

これは

人生そのものにも通じること

 

お金も

人によって世の中を良くも悪くもする

 

知識や情報も

人によって活かし方で良くも悪くもなる

 

何が違うのだろう

 

答えはお分かりの通り

それを使う「人」によって良くも悪くもなる

 

あなたの人としてどういう考え方

つまり

あなたの価値観が何か

 

それがもとに現われる

あなたの人間性は何か

 

感情のままに生きれば

まずメメント・モリはほとんど意味をなさない

 

価値観に沿って生きようとすれば

メメント・モリは良い方向に導いてくれるだろう

 

あなたにとって

自分事だけで物事が良くなるとは思わないはず

 

より大きなものの一つと捉えるなら

互恵によって幸福を得られることも

理解できるはず

 

自分の行為が

何かの役に立った時

必要とされているとき

あなたはこのうえない喜びを得ていることを

感じているはず

 

あなたが利益を得ることより

周りの人との関係性によって

幸福を得られている 

 

あなたの能力を示す場があっても

それを認めてくれる人いても幸福を感じるはず

 

しかしそれ以上に

それを本当に必要としている人がいて

初めて本当の幸福感が得られる

 

あなたの生涯の仕事をそういうものにしよう

 

そして

あなたにとっての適職

つまり

天職とはそういうものだろう

 

しかし

あなたは周りを見渡せば

「今」を維持するためや

今の苦痛から逃れるための情報や資源など

迷わすものや歪めるものがいくらでもある

 

それらが

あなたの価値観に沿ったものか(理性)より

今のあなたを心地よくするものかどうか(感情)で

評価判断することが多いだろう

 

もちろん

ここで書いていることがすべてではない

 

一つの方向性を示しているに過ぎない

 

あなたの答えは

あなた自身で正解を築いていくものであり

何もしなくてもその正解は

時とともに

状況によっても 

変化していくものだから

 

そう

あなたの人生の正解は必ず変化する

 

だからこそ

その正解の変化とともに

あなた自身もよりよく変化していく必要がある

 

それが

あなたの人間性を磨く意味でもある