ロジカルシンキングの罠

「仮説を立てる」ときや「意思決定」にも必要となる

ロジカルシンキング」の罠について考えてみよう

 

ロジカルシンキングはとても重要なスキルとして

他人を説得する際にも絶大な力を発揮する一方

物事の成否を見極めるには

実はそれほど役立たない

 

ビジネス書ではロジカルシンキング

「物事を体系的にとらえて全体像を把握し

内容を論理的にまとめて的確に伝える技術」などと

説明されている

 

ここで注目したいのは

「体系的」あるいは「全体像を把握」といった言葉

 

人間が「全体像を把握」することなどそもそも可能か

 

構築できる「ロジック(論理)」は

当人がかき集められある情報の範囲に依存しているということ

 

つまりは

現時点の自分の能力

現時点の自分の見えるもの、理解できるもの

知り得たもののなかでの「全体像の把握」となる

 

当人がすべての情報を得ることができないとう情報の壁と

当人が持つ「リテラシー」の壁ともう一つ

 

「心の状態と心の作用」によって論理を都合のいいように歪める壁

この三つの障壁が存在する

 

つまりは

無自覚な心のフィルターも厄介な障壁だから

 

問題は

その三つの壁を認識しないままに

認識できる範囲を「全体像」と捉えてしまうこと

 

ロジックを構築する土台となる材料自体が

不正確さを含んでいる

 

だから

いつものとおり

「自分を疑うこと」は

当たり前のように自覚すること

 

認識の誤りは当たり前

 

だから

更新し続ける必要があるし

ベストの答えより

そのとき「よりよい」ものを選択できるようにする

 

大切なのは

そこで修正できるような自分になっているかどうか

 

今まで正しいと認識されたものを否定することに

抵抗しようとしていないか

(今までの正しさを強化する情報しか見ないとか)

 

そんな私自身もこれまで間違った情報も紹介してきたことは

否定できない

 

だから

以前と今では前提知識も変わっている

 

ここでの知識、情報も必ず

あなた自身で精査し思考する

 

ロジカルシンキングすること自体が悪いことではない

 

むしろ必要なこと

 

重要なことは

ロジカルシンキングした「プロセス」を経験し続けること

 

前提が間違っていれば気づいた時点で修正すればいいし

人から指摘されれば修正できるような心や考え方、姿勢を持てばいい

 

最も大切なことは

そうやって学習し思考したもので

自分なりの意見を持つこと

 

その意見をそこで終わらず

磨きあげていこう

 

それは

人にコントロールされないためでもあるし

あなた自身がよりよくなっていくためでもある

 

間違っていることを否定して

いつまでも自分の考え方に組み込んでいても

よりよい思考も決断も判断もできるはずもない

 

前置きはこれくらいにして

 

そもそも

自分の認識はそんなに信用できるものなのかというよりも

人間に現実を正しく認識する能力はあるのか

あらためて考えてみよう

 

ここから本題

 

社会は人間が現実を正確に認識でき

論理的に説明できることを前提につくられています

 

しかし

現実の複雑さは人間の理解力や認識力を常に超えているため

人間の認識は何度でも裏切られます

 

人間はその度

後付けで合理性をつくることで

現実を「理解したこと」にしてきました

 

「後付けの合理性」とは

過去の起こった出来事にもっともらしい原因を見つけて

あたかも筋が通っているかのような

共通理解を持とうとする行為のことです

 

人のつくりだす論理は

情報の不足と理解力の限界によって

完璧なものにはなり得ません

 

しかし

社会は「論理的であること」を判断の前に求めるので

しかたなく後からそれらしい理論をくっつけて

「理解できている」ことにしておかないと機能しないのです

 

人間の脳が現実を正しく理解できるほどの

処理能力を持ち合わせていないという事実は

たびたび忘れられます

 

実際には判断をするための情報も

異なる情報をつなぎ合わせるためのリテラシー

私たちには常に不足しています

 

私たちにできるのは

目の前にある手持ちの材料を混ぜ合わせて

自分も周囲も納得できるような

「その場しのぎの合理性」をつくることだけです

 

本当の意味で合理的な判断がしたいならば

非合理的なものを許容しなければいけません

 

「わからないものはわからない」ことを

事前に理解しなければならないというパラドックスから

人間は逃れることはできません

 

だからこそ

まず自分自身の認識すらも誤っている可能性を

常に考慮に入れたうえで意思決定をする必要があります

 

ひとたび動き出せば

新しい情報が手に入り

「認識」は随時アップデートされていきます

 

将来的に新しい情報が得られるであろうことを

考慮に入れたうえで

一定の論理的な矛盾や不確実性をあえて

許容しながら意思決定を行うことが

未来へ先回りするための近道です

 

よくよく世の中を眺めていると

どう考えても論理的におかしいことが

当然のこととして扱われていたりする

「あべこべ」な現象がいたるところに存在しています

 

たとえば

とてつもなく頭が良い人であれば

事業を必ず成功させられるかといえば

そんなことはありません

 

ずば抜けて頭が良い人であれば

どんな問題が起こっても対処可能なように思われますが

どうやら実際の事業の成功確率と頭の良さは

比例していないようです

 

MBAの講師や有名コンサルタントが実際に経営者として

成功するケースは多くありません

 

自分で経営したことがない経営学者や

事業の経験がないコンサルタント

経営を語ることの奇妙さが議論されることは少ないようです

 

たとえば

リーマンショックによってすべてを失ってしまった投資会社も

経営のリソースをより高収益なサブプライムローン

集中させたこと自体は

当時においては合理的な判断だったでしょう

 

今、その選択を愚かだと非難することは簡単です

 

しかし

それを事前に指摘できた人はほとんどいませんでした

 

ロジックと結果は明らかに連動していないのに

すべての意思決定は常に

ロジックに依存して動いているというジレンマは

様々な形で見られます

 

ポール・グレアムという投資家は

この矛盾を突いてベンチャーキャピタルの世界で

成功を収めました

 

AirbnbDropboxのような

1兆円規模のメガベンチャーへ出資する投資家でもあり

Y Combinatorの創業者でもあるグレアムは自著で

「どのスタートアップが大成功するかなんて誰にもわからない」と

語っています

 

グレアムは自身の主観的な判断を信用しません

 

起業家の持つ様々な素質を数値化し

一定の基準を超えたスタートアップには

等しく投資を実行するというルールを設け

これまで大きな成功を収めてきました

 

普通

投資は自分がうまくいくと確信した事業に対してのみ行います

 

投資家というのは

先見の明に自信がある賢い人がなるものですからなおさらです

 

しかし、グレアムは

「将来を正確に予想することは誰にでもできない」という

前提に立ち

自分も例外扱いしませんでした

 

グレアムは自分でも認識できない可能性に投資することで

リターンを得ています

 

一方で

長年の勘と経験をもとに

事業計画の妥当性と企業の成長性を納得いくまで議論して

「合理的」に投資決定をする多くの人が

グレアムのリターンに届かないのは

また何とも「あべこべ」な話です

 

ITや株式投資など

物理的な制約を受けにくいビジネスは

上位1%が全体の99%の利益を稼ぎだすなど

強い非対称性を持つ傾向があります

 

グレアムはここに潜む矛盾をうまく突き

成功を収めています

 

今日はここまで

 

以前も似た内容を書いたことがあるので

復習の内容となるが

繰り返し伝えていることで

「一事は万事」ではないということ

 

日々

いろんな分野の本を読んだり

ネット情報を見たりしているが

専門家による専門出ない分野の説明は

違和感があることが多い

 

前提知識を知らなければ

さも納得できることであったろうことが

今では

前提(基礎知識など)を学んでから

得たい情報内容が

前提が間違ったところからの説明がなされると

そこで自分の知識との整合性をしていく必要がある

 

それが経営であったり

それが日常の仕事においてもそう

 

日常が当たり前になっていることに

常識だと思っていることに疑問を抱く習慣と

ロジカルシンキングするプロセスを経ることは

自分自身の評価決断の力となる

 

他にも、それが

歴史であったり

お金の役割であったり

科学の分野であったり

世界情勢であったり

優れた結果を出された人の話や本の内容にでさえ

おかしいと思うことがある

 

たとえば

事業に大成功を収めた人が

国の運営の話をすると

おかしなことになることは

ここを読んでいる人なら理解できるだろう

 

もちろん

しっかりと

経営との違いを認識し

国の運営をまた学習し経験していくならば問題はない

 

経営の感覚で

意見を述べることに問題があるということ

 

そういう人は大きな成功を得たがゆえに

自分の思考(経営感覚)は万事に当てはまることと

勘違いしてしまっているのだろう

 

それに加えて

国はそういう人の意見をもとに

政策運営をしようとする

 

大企業の売上利益が

どんなに束になっても

1億2千万人の日本人の豊かさを

カバーできることは絶対ないということ

 

それは

誰かの資産は誰かの負債という現実から逃れられないから

 

その負債をデフレ時に

誰もができれば背負いたくない負債を

誰が背負うかだ

 

ここら辺の話は

また機会あるときに改めてしていきます